研究課題
基盤研究(C)
平成18年度は最終年度として戦前期失業政策体系を歴史的に位置づけるための作業を中心に行った。第一に、中央政府(内務省・社会局)および地方自治体(大都市の社会行政部局)による失業対策の立案過程・実施過程の推移を昭和恐慌期前後期を中心に実証的に明らかにした。特に、諸審議会における失業問題の扱い方の連続性と時々の変化を明確にした。第二に、戦前期の政策を戦後から今日にいたる推移と対比させて歴史的に位置づける作業を行った。これについては、戦後の失業政策を失業給付制度、失業者直接雇用制度、解雇規制策の各側面を含めて総合的に性格付け、それとの関連で戦前の政策が失業者直接雇用制度を中心とし、失業給付制度は部分的なものに終わり、解雇規制は企業に対する期待の表明に留まったことを確認するとともに、その根拠を実証的に明らかにする作業を行った。第三に、戦前期における失業対策の国際比較を行い、その中に日本の特徴を位置づける作業を行った。このため、国際労働会議における日本の発言・行動の推移を分析するとともに、労働政策における国際協調に消極的な日本に対して苛立ちを強める各国の動向をソーシャルダンピングをめぐる論戦等を素材として分析し、その歴史的意味について検討した。第四に、日本の政府・財界団体・学識者の欧州各国の失業対策・失業保険制度に対する見方が、1920年代末期から急速に厳しいものとなり、そのことが日本における失業対策の充実を阻む主要な要因となり、結果的に強行的な景気回復によってしか失業問題の解消は図れないという事実上の有識者間のコンセンサスが形成される方向に向かったことを実証的に跡づけた。
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政治経済学経済史学会『歴史と経済』 195号(近刊)
The Journal of Political Economy and Economic History No.195(forthcoming)
東京大学社会科学研究所『社会科学研究』 58-1
ページ: 125-155
政治経済学経済史学会『秋季学術大会報告要旨』 2006年度号
ページ: 69-74
The Journal of Social Science vol.58,no.1
The Proceedings of Annual Conference of Political Economy and Economic History Society in 2006