平成17年度における本研究の実績は、以下の通りである。 1.資料調査 資料調査については、まず前年度に引き続き、戦前の鉄道行政を監督していた官庁である鉄道省の行政資料『鉄道省文書』の検索・点検作業から着手した。その多くは、交通博物館(東京都千代田区)に所蔵されているが、同館の閉館(平成18年5月14日)が間近に迫っていることもあり、資料の閲覧予約が殺到する中で調査スケジュールの調整にたびたび苦慮した。 中央官庁資料の調査と並行して、今年度より新たに府県レベルでの鉄道行政文書の調査に着手した。さしあたり、福島県、宮崎県、鹿児島県の3県を調査し、福島・宮崎両県については、限られた日程の中ではあったが、膨大な鉄道関係行政文書の存在を把握した。鹿児島については、鹿児島市交通局が所蔵する市営軌道事業に関する資料を、同局の協力を得て発見することができた。 その他、国立国会図書館、国立公文書館(以上、東京都千代田区)、青梅市郷土博物館(東京都青梅市)、横浜開港資料館(横浜市中区)などにおいても、散発的な資料調査を行った。 2.資料収集 交通博物館所蔵の『鉄道省文書』については、前述したような制約条件の中で、重要度の高い資料から優先順位をつけて、マイクロフィルム・コピーの収集に努めた。また、福島県庁文書、宮崎県庁文書、鹿児島市交通局所蔵料については、資料保全の関係で電子式複写(コピー)が認められないため、デジタルカメラ持参による撮影によって必要部分の資料収集をおこなった。宮崎県庁文書については、なお追加的な資料収集が必要であったが、日程の都合がつかず、次年度へと持ち越さざるをえなかった。 3.研究の発表 以上のように調査・収集した資料は、その膨大な量から整理未了のものも多く、公表された成果としては別掲の範囲にとどまった。社会経済史学に掲載された論考は、書評という形をとっているが、鉄道政策史研究をめぐる論点と課題を、本研究から得られた成果をふまえて学界に提起したものである。
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