1 戦時統制経済下の中小商工業の整備・合理化政策の推移を解明した。国民更生金庫の内部資料から重要な基本資料を中心に、資料集(全6巻)を編纂し、戦時動員の経済的負担の分散を図りつつ、低生産性事業者の整理を進めたことを解明した。実証部分では、工業部門や流通部門で最大の従業員数をもつ織物工業と繊維問屋・小売業における産業組織の再編に力点を置いて解明した。この結果、最低生産規模規制の導入、複雑な流通取引の簡素化が一挙に進んだこと、転廃業者に対する補償措置によって強制廃業を避け、業界団体の自治的整備計画が実施されたことなどが明らかになった。 2 中小企業整備を本格的に開始することになった太平洋戦争の開始前後の総動員計画を解明した。昭和16年度から19年度の物資動員計画に関する新発掘の重要資料を中心に資料集(全4巻)を編纂し、昭和16年の独ソ開戦、米英の対日資産凍結前後の対英米開戦準備期の総動員計画を詳細に明らかにした。この結果、対蘭印経済交渉の破綻頃から、対英米開戦と仏印、蘭印、フィリピンの軍事占領を前提とした総動員計画が策定され始めたこと、軍による船舶徴用が民需品生産を極度に圧迫していったことが明らかになった。 3 総員体制の構造を日中戦争期から戦後統制期を通じて概観し、高度な機械工業大量生産体制が生み出される一方、民需関係中小企業が徹底して犠牲になったことを明らかにした。
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