本研究は、持続可能な社会の実現に向けて、企業がいかにしてNPOとの環境パートナーシップを形成し、それを通じて組織行動をどのように変容していくのかについて、理論モデルを構築し、あわせて実践的な提言を行うことを目的としている。具体的には(1)企業とNPOとのパートナーシップの形成→(2)それを通じた組織変容→(3)持続可能な社会の構築に向けたイノベーションの創造、というプロセスを解明する。この目的を達成するために、本研究では、まず先行研究として、組織関係論、組織間学習論および社会学的制度理論に着目して概念整理を行った。理論構築の過程で、組織内部の多様な部門と組織外部のNPO等のステークホルダーとを結びつける結節点として、環境部門ないし社会貢献部門の境界連結機能に着目し、その役割と機能変化に焦点を当てることとした。 事例としては、まず、日本電気株式会社(NEC)とNPO「環境文明21」との環境報告書共同作成事業を取り上げた。ここでの発見事項は、NPOとの連携の形成と協働の促進において、境界連結機能を果たした「環境推進部」の社会的ネットワークの広がりと、多様な人材構成が大きな役割を果たし、環境経営の基本コンセプトが形成されたことである。次に、同社とNPO「あさざ基金」との霞ヶ浦浄化プロジェクトを調査した。その結果、NECにおける「経済・社会・環境」の三位一体の組織動向が明らかとなり、その中での境界連結機能の重要性とその進化が確認された。 なお、本研究は、オフィス・オートメーション学会全国大会で2回の研究報告を行い、一部の成果を中央経済社より出版する予定となっている。
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