デジタル技術の進展は、世界経済に大きな影響を与えている。中国、韓国、台湾といったアジア諸国はデジタル製品の開発・生産・消費という面で、一躍、世界の最先端を走る国になった。デジタル機器の産業構造は、アナログ機器を生産していた時代とは大きく変化していることを認識した上で、このような環境下での製品戦略立案の指針を示すことを研究した。具体的には、デジタル機器産業での製品開発を考えるうえで最も重要な観点として、モジュール化・水平分業化・標準化という課題を取り上げた。このような課題は、グローバル化や製品リードタイムの短縮化による不確実性の回避といった顕在化しやすい問題だけでなく、買収・合併・産業再編といった企業間関係やコモディティ化といった企業経営問題と深く関わっている。このような製品戦略は、1980年代の日本の製造企業では考えられなかった内容である。しかしながら、いまだにその当時の製品戦略を実行し続けている日本企業が多く存在しているのも事実である。確かに、日本企業は、上手なすり合わせが要求される局面では、非常に優秀な製品を設計する能力に長けている。多くの日本企業は、垂直統合化された組織構造で、さまざまなグループが知恵を出し合い、製品の品質を高め、それをマネジメントする能力、すなわち、企業内ガバナンスに注力することを経営の中心に置いてきた。しかしながら、デジタル機器では、ソフトウエアとハードウエアともに高度なレベルが要求され、さらにはシステム複雑性が高く、なおかつ、それぞれの開発研究には全く異質な能力が要求される。水平分業化・グローバル化した製品開発環境では、強固な企業内ガバナンスによりアウトソーシングを進めるなど、企業間ガバナンスの能力も要求される。 本研究では上記の概要を明らかにした。
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