日本のエレクトロニクス産業では、製品を構成する部品・モジュールに対し、内製化、あるいは、市場調達という選択が可能である。さらに、世界的に認知され、成長した産業では標準化によってモジュール化が進み、参入企業間の製品アーキテクチャの違いが小さくなっている。一方、年間1億台以上の市場規模を持つパソコン、携帯電話、DVDプレーヤーなどの産業では、そのモジュール市場ですら極めて大きな産業に成長しており、主要モジュール市場が完備され、技術的なバックグラウンドの有無に関わらず容易に参入できる産業となっている。このようなデジタル機器産業では、さまざまな分野で日本企業が大きな役割を果たしてきた。日本企業は現在でも多くの知財を支配し、製品・主要モジュール両産業において大きな影響力を持っている。しかしながら、セット企業の生産性という側面において、中国、韓国、台湾などの企業との競争では必ずしも有利な位置にいるわけではない。多くの日本企業は主要モジュールを内製化しながら外販もしており、セット企業間の国際的な競争と、モジュール供給による技術の漏洩というジレンマに直面している。 研究結果により明確になったのは、まず、日本企業の強い産業では、製品開発段階ですり合わせ・垂直統合部分が残っている。しかし、このような産業は、液晶テレビ、PDPテレビ、DVDレコーダーなど、比較的、新しい産業が多く、今後、完全なモジュラー化・水平分業化が起こる可能性も否定できない。完全に水平分業化された産業構造では日本企業の競争力は発揮できていない。このような産業で日本の競争力を維持するには、ブラックボックス化され知財に守られたモジュールで参入障壁を築き上げるという方策と、モジュール化しながらも、デジカメのレンズのように、その組み合わせにすり合わせを埋め込み独自プラットフォームを築き上げることが必要である。
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