定性的分析と定量的分析を組み合わせるという、研究計画の基本概念に準じて研究をすすめ、以下の実績があった。 最終年であり、以下の2つの研究手法により、両視点から論文をまとめた。 1.定性的研究による発見:オープンネットワークの限界は、「顧客ニーズの頭打ち」で決まる。日本の製造業は、完全なオープン・モジュール型の製品開発では、中国企業などにコスト競争で負けてしまう。そんため、多少コストがかかっても、クローズド型、擦り合わせ型のメリットを追求する必要がある。それを実現するためには、クローズド型によって可能となった高い機能や品質に対して顧客が追加的な対価を支払う必要がある。しかし、近年は技術レベルの高揚によって、オープン・モジュール型の低コスト商品でも十分な機能を持ってしまう点が問題である。企業に対する定性的調査によって、機能だけでは直ぐにニーズが頭打ちするので、機能を超えた意味的価値を創出することが必要であることがわかった。 2.定量的分析による発見:86のコア技術に関する質問票調査の結果、クローズドネットワークを中心とした擦り合わせ型の経営において、持続的な強みを実現するためには、知財や特許以上に組織能力の積み重ねが重要であることがわかった。特に、技術者の学習、生産技術やテスト機器の改善やデータ蓄積、組織ルーチンの構築などにおいては、長年かけた積み重ねでなければ実現できない部分がある。そのため、決して競合企業は簡単には模倣できないことがわかった。 これらの結果によって、日本の製造業が持続的に高い付加価値をあげるためには、「組織能力の積み重ね」によって「意味的価値の創出」を実現することが必要であることがわかった。
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