今年度の研究概要は、以下のとおりである。 1.転職に関する調査のデータ分析 昨年の初めに実施した大学卒業生の転職についての調査のデータ分析を実施した。まだ、論文としては完成されていないが、以下のような点が明らかになった。まず、転職率と婚姻率との関係であるが、転職率が高いと婚姻率は明らかに低くなっている。また、労働時間が長かったり、会社の将来性がないといったことが、転職率の大きな原因となっていた。また、一般的には、転職した場合、労働時間は短くなるが、給与も低くなっている。また、卒業大学で転職パターンは異なる。 2.国際学会報告と海外調査 2004年9月にギリシャ・クレタ・クレタマリスホテルで開催されたThe 9th International Telework Workshopにて、'Why isn't it Teleworking? A case of Flexible Work'というテーマで報告をおこなった。これは、データ入力を業務とする中小企業で、社長以外の全員がパート女性という職場で、生産性を向上させながら、フレキシブルな働き方(自由出勤制)をしている企業の事例を紹介した。この事例は、非正規社員中心でも、信頼関係の強い会社が成立しうることを示したものである。 海外調査は、この学会報告の際には、集団主義的傾向をもつギリシャの人々の働き方を観察した。また、昨年6月には、中国の広州に企業調査に訪問した。ギリシャでは、あまり不安感のない社会であり、信頼性の高い社会であると観察できた。それに対して、中国の工場では、罰則が一般化しており、労使間での信頼関係は極めて低いものであると観察することができた。 3.就業の多様化の現状と課題についての分析 就業の多様化についての理論的整理を実施して、就業の多様化が四つの多様化(雇用形態の多様化・就労形態の多様化・勤務形態の多様化・就業者の多様化)からなることを示した。その中で、現在、雇用形態の多様化が進展しつつあり、企業は人件費の変動費化を確実に進めている現状を明らかにしつつある。非正規雇用者の増大などがみられるが、日本社会では、彼らも長期勤続傾向がある。とくに、労使の関係が良好で働きやすい環境を提供しているところでは、その傾向がみられることを事例から調査した。
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