研究概要 |
今年度の研究概要は、以下のとおりである。 1.多様就業実態に関する企業調査 製造業を中心に、6社の企業調査を実施して、若年者・高齢者・女性等に関する雇用状況・人事管理の実態を調査した。高齢者については、雇用延長の実施に前向きであり、また、女性活用についても、社長直轄の女性活用室を設置するなど、積極的な傾向がみられる一方で、若年者のフリーター・ニートに対しては、とくに積極的な採用をしようという傾向はみられなかった。女性活用については、在宅勤務・育児休暇の延長など、勤務形態の多様化を目指した政策も、実施される傾向にあることが判明した。また、これまでの日本の人事管理が同質的な雇用者を対象としたものであったのに対して、多様就業形態を前提とした管理手法の開発の必要性も確認された。日本型のダイバーシティ・マネジメントの確立への取り組みが経営学において不可欠である。 2.非雇用型就労(外注・請負)・非正規雇用(パート・臨時・派遣等)における労使の信頼関係上で発生する問題的についての研究 これまで、業績改善に向けて、アウトソーシングや非正規雇用の活用が積極的に進められてきたが、ここにきて、このような正規雇用者以外の就業者において、労使の信頼関係上、種々の障害が発生していることが、労使関係の実態から判明している。労働者性、使用者性については、雇用契約上の法律的な解釈ではなく、実態的な解釈が必要となってきており、正規雇用以外の就業者における労使紛争が、経営上の危機をもたらす可能性もあり、正規以外の就業者と使用者との良好な労使関係構築に向けた取り組みの必要性が、各種労使紛争の実態から、確認された。 3.国際学会報告 2005年8月29日-9月1日に、英国Preston, Lancashire Business Schoolにて開催されたThe 10th International Telework Workshop and the 2nd ITA Conferenceにおいて、奈良産業大学杵崎のり子助教授との共同で、'A Case of Knowledge Workers in a small Japanese manufacturer'の論文報告をおこなった。内容は、中小製造業での従業員が、単品受注生産の自動化に成功した企業において、肉体的労働から知的労働へどのように労働の質が変化したかについてである。
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