わが国の介護サービス組織(非営利組織の特別養護老人ホーム)は、ドイツの介護保険制度を参考に設計されたわが国の介護保険制度の下で、スウェーデンの小規模集団型介護施設の影響を強く受けている。そこで、今年度は、わが国の新しい老人ホームの基礎になったドイツとスウェーデンの老人ホームにおける介護サービスシステムとマネジメントの現状を調査した。 ドイツは日本に先駆けて5年早く介護保険制度を開始しており、すでに介護サービス組織における介護サービスシステムに関して、多くの課題が明らかになりつつある。調査の結果、介護サービスの質の保証に関して、ハイム法、ケアプラン等により厳しい管理を実践しているが、介護現場で実際にサービスの質が維持されているかトレースするような仕組みが必ずしも十分ではないことが明らかとなった。 他方、スウェーデンでは未熟練労働力に依存せざるをえない状況にあって、介護職員を大量に現場に配置することで質の確保を追求してきたが、コミューンの財政難の影響を受けて職員数の減少が見られるようになり、介護現場で実際にサービスの質を保証することが難しくなりつつある。これまでの介護サービスシステムの見直しが必要になってきているといえよう。 これらの課題はわが国においても直面する課題であり、来年度は職員の熟練度、職員数、小規模の介護サービスシステムを構築するノウハウ、管理職のサービス管理スキル等の観点で、わが国の特別養護老人ホームの現状と比較しながら考察を加えたい。
|