介護保険制度下のわが国の介護サービス組織(非営利組織の特別養護老人ホーム)は、スウェーデンの小規模集団型介護施設の影響を強く受けている。そこで本研究では、平成16年度にわが国の新型老人ホームの基礎になったスウェーデンの老人ホームにおける組織構造、介護サービスシステム、サービスマネジメントの現状を調査し、平成17年度にそれらの調査結果を分析して論文にまとめた。 調査の結果明らかになった点は以下の通りである。 (1)単に全室個室のユニットケアの形態になっているだけでなく、居室にトイレとシャワーの付いた小さな自宅のような設計になっているため、施設介護ではなく在宅介護の延長線に位置づけされている。 (2)職員の配置状況は職員数:利用者数の比率が常勤換算で1:1.2と恵まれているため、職員の燃え尽きに対しては十分に配慮されているといってよい。 (3)介護職員の業務内容はわが国の内容とはかなり異なっている。(1)入浴介助がシャワー浴中心であり、実施回数は週に1回であるため作業負荷がかなり少ない。また、排泄後のシャワー洗浄を徹底しているため、老人ホーム特有の臭いの問題は解決されている。(2)食事は非常に質素であるため、食事介助の業務量が少ない。また、夕食はかなり早い時間に設定されているため、職員の勤務シフトを組むのが非常に楽になっている。(3)排泄介助は共同トイレを全く使用していないためプライバシーが完全に守られている。おむつ交換はわが国で言われているような一日4回の交換ではない。 (4)勤務態勢として、1ヶ月間の夏季休暇が完全に消化でき、一日に数回の休憩が確保できるように勤務表および日課が組まれている。 スウェーデンにおいては以上のような介護サービスシステムが構築されているため、小集団型介護組織の運営が可能になっていることが明らかとなった。
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