バブル経済の崩壊とともに、拡大・成長を目標にした企業行動から、コアとなる事業に経営資源を集中させて本業回帰を志向する企業が多くなってきた。また、中国、韓国などの東アジアに生産拠点を設けて日本から中国へ拠点を移転させた企業も、グローバル競争の激化とともに、研究開発拠点、マザー工場としての日本の生産拠点を見直し、国内回帰の動きが生じている。 本研究では目中韓を中心にグローバル展開を実施した日本企業を対象に、インタビュー調査やアンケート調査を行ってその現状を明らかにするとともに、事業再構築によって生じる経営管理上、人事管理上の諸問題にアプローチした。平成16年度はオムロン、ブラザー工業を事例として、事業再構築の経過、事業再構築による事業構造の変化、事業再構築による人材の処遇等についてのインタビュー調査を実施した。平成17年度は、これらのインタビュー調査から得られた成果をもとに、より詳細なインタビュー調査を実施するとともに、アンケート調査を行った。インタビューは、大連にあるアルパインを訪問して、事業再構築の現状を調査した。また、事業の再構築を行う動機、事業再構築の具体的な内容、それを実施する際のマネジメント上、人事管理上の諸問題、中国事業展開についてのアンケート項目を上場企業(平成17年11月)に送付し、82社から有効回答を得た。アンケート調査の集計結果は「三田商学研究」に公表したが、SAS、SPSS等の統計ソフトを用いた詳細な分析は継続しており、これらの分析を通じて、わが国企業の事業再構築の現状と問題点が明らかになった。
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