「市場経済移行期のロシア企業-ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンの時代-」と題する論文を作成した(博士学位請求論文とし、明治大学大学院経営学研究科において博士学位を認められた)。結論は以下のとおりである。 [1]ソ連社会主義企業システムは、公式に認められていたような基本的特徴を1930年代以来有していたが、実際にはそれらと反するような派生的特徴をも有する矛盾したシステムであった。その矛盾を克服して社会主義企業システムの再生を図ったゴルバチョフ改革、市場経済に適合した企業システムへの大転換を図ったエリツィン改革、そして、エリツィン改革の否定的側面を克服しようとしたプーチン改革の過程で、ソ連社会主義企業システムの基本的特徴と派生的特徴は多面的な影響をソ連・ロシアの企業システムに刻印してきた。 [2]一般的に現代経済における市場メカニズムのもつ効率性は明らかであり、ゴルバチョフ政権の選択にも示されているように、市場メカニズムを使わずに企業の効率性を維持・向上することは、ほとんど無理といってよかろう。しかし、現実の社会にいつでも無制限に市場メカニズムを導入すればよいわけではない。エリツィン政権下のロシア企業システムの状況が示すように、国家の経済からの退場がただちに企業活動を効率化させるわけではない。 [3]市場経済化を経てもなお、ロシアの企業システムにはソ連型社会主義企業システムの基本的特徴、派生的特徴が残存しており、そのことがロシアの経済と企業システムの発展の展望に懸念をもたらしている。
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