損害保険企業の再編成が加速したのは2000年代に入ってからである。このためデータベース(1970〜2003)作成にあたっては、合併以前の独立した企業データを合算し、合併後の新企業が1970年から存在していたものと仮定した。分析対象企業は、東京海上、損保ジャパン、三井住友、日本興亜、あいおい損保、日新火災、日動火災、富士火災、共栄火災、朝日火災およびニッセイ同和の合計11社である。 元受正味保険料に占める自動車保険の割合は2003年で、任意保険が47.7%、自賠責で16.2%、合計でおよそ64%にも達している。任意保険だけを見ても2001年に50.4%であり、自動車保険が損害保険企業の経営に与える影響の大きさには疑問の余地がない。このため損害保険企業について、 自動車保険料割合=自動車元受正味保険料÷種目合計元受正味保険料 自動車保険料シェア=自動車元受正味保険料÷自動車元受正味保険料総合計 自動車保険単価=自動車元受正味保険料÷自動車元受件数 を求めた。 分析は最初に、費用関数とシェア方程式から構成される同時方程式モデル(SURモデル)を設定して費用非効率を年度別企業別に計測し、さらに非効率をランク化して質的従属変数モデルであるオーダード・プロバビリティ・モデルを用いて、自動車保険関連指標が非効率ランクを変動させるかどうかを分析した。その結果、保険料収入に占める自動車保険料割合が大きくなるほど非効率ランクが低下して、企業の効率性が向上することが判明した。また、業界全体の自動車保険に占める各企業のシェアが増大すれば企業の効率性が向上することが観察された。さらに、自動車保険単価も効率性に大きな影響力を有することが明らかとなり、これより損害保険企業の経営効率が自動車保険により左右されるという事実が確認された。
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