在中国の日系および米国系企業に対するアンケート調査を実施し、各々の集団的労使関係の実態を明らかにした。 日系企業における「工会」の設置率は約70%であるのに対し、米国系は30%強に留まっている。「労働協約」に関しても、日系は工会設置企業の56.7%が締結しているが、米国系は43.3%となっている。こうした日系企業の行動は、工会の設立と機能強化を図る昨今の中国政府の施策に沿ったものとして評価されよう。 しかし、調査結果から、日系企業の集団的労使関係には以下の課題があると考えられる。 第一は、「上からの労使関係」の様相が感じ取れるという点である。それは、日系企業における労働協約の締結が社内の労使の必要性よりも社外の労働関係機関の意向を反映した事象であること、経営側と工会の「定期協議・情報交換」といった労使の日常的なコミュニケーションが少ないことなどに現れている。第二は、「労使一体」の様相である。すなわち、日系企業では工会主席の「専従化」が進展せず、職制の管理者以上の兼任が依然として主流である。こうした中、今後日系企業においては、労使双方の立場を明確化するとともに、「職能的分化」による所得格差の拡大や農村戸籍労働者の合法的権益保護の問題等への対応を図ることが求められると言えよう。第三は、「労働争議やストライキへの工会の抑止力・対応力不足」という問題である。日系企業では工会が労使間の摩擦の防止・解決に大きな役割を果たしているとは言い難く、工会の設立が即時に労働争議やストライキの抑止力として作用するものでないと思われる。そして、第四は、工会が抱える「二重の任務」に関するものである。中国の関連法規によると、工会は「従業員の代表」であるとともに、党と従業員をつなぐ「架け橋・絆」として位置づけられている。こうした組織体としての「多義性」に工会がどのように対応していくかも課題であると言える。
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