本件は平成18年まで3年続く研究の2年度である。本研究の目的は邦銀の経営行動を、環境変化に対応した経営戦略と組織の観点から実証的に研究し、今後の邦銀経営再生の条件を求めようとするものである。初年度に行った、経営者のアンケートとインタビュー調査データをベースに、本年度はいくつかの研究をまとめ、学会等で発表し、論文を作成した。 1.研究経過 昨年度本研究の方法論を確立し、2005年10月主要邦銀8行約70名の旧経営者を対象に経営戦略アンケート調査を実施した。さらにそのうち4名に2006年3月インタビュー調査を行った。本年度はこのアンケートおよびインタビュー調査結果のとりまとめと追加インタビュー、理論的枠組みの整理のための既存研究のサーベーを行った。取りまとめた結果を2006年3月、9月の証券経済学会全国大会、2006年10月の日本経済学会シンポジウムで発表し、論文にまとめて学会誌等に投稿した。 2.研究実績 現時点でアンケートによるデータを得、インタビュー調査のアポイント設定も終了した結果、70年代から90年代の主要邦銀の経営行動について、この間の大きな環境変化に対応した銀行ごとの明らかな戦略行動と組織対応の差異を認めることができる。この分野でのデータに依拠した実証研究が皆無であるだけに、この調査を通じた知見は今後の銀行経営研究の分野の発展に大きく寄与できる可能性がある。 本研究の取り敢えずの集大成論文である「邦銀に経営はあったのか-環境変化と大手邦銀の戦略行動の検証-」は証券経済学会『証券経済学年報』に投稿し、2人のレフリーから研究の独自性と将来の発展の可能性につき評価を得ることができ、いくつかの点の修正を経て2006年3月7日論文は受理された。 3.来年度の計画 このアンケート調査データとインタビュー調査の結果得られた知見を元に、今後いくつかの銀行に絞り、さらに経営者インタビューを深めて行うとともに、アメリカの銀行経営についての研究を並行して行い、日米の銀行経営行動を比較する形で最終的な研究のまとめを行いたい。
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