研究概要 |
本研究は,消費者選好の形成と変化について,計量的な分析とシミュレーションによる理論的な分析の両方からアプローチした。 第一に,消費者選好が形成・変化するメカニズムとして,消費者の経験を通じた内的な選好形成と消費者間相互作用による外的な選好形成の2つの側面に注目した。前者では,統制実験によって選好形成が知覚と言語経験から受ける影響を立証し,後者では,エージェントベース・モデリングによって,消費者間相互作用から消費者選好の異質性が生じる過程を分析した。後者は,学会発表後,ポストプロシーディングスに採択された。 第二に,選好形成や変化を測定する手法の開発に取り組んだ。非補償型ルールを含む多段階の選好を確率的選択モデルによって捉える方法や,階層ベイズ手法により個人差を考慮しながら選好形成(選好の一貫性の成長)を測定する方法について学会で発表した。さらに消費者間の潜在的な(観察されない)影響関係を識別しながら消費者選好を計量する手法について研究を進めている。 第三に,マーケティング政策が選好変化に与える影響については,傾向スコア法によって広告の短期効果があるかどうかを検証する研究を行い,筑波大学社会システム・マネジメント専攻のディスカッションペーパーとしたほか,学術誌に投稿中である。また,インターネットに代表される新たな情報環境に登場したロングテール・ビジネスモデルについて,特に消費者選好の変化に注目しつつ論じた論文も発表した。
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