研究課題
基盤研究(C)
本研究は、食品安全および食料供給の安定確保に関して、農産物認証システム(food assurance schemes)が果たす役割を考察した。第一に、イギリスのAssured Food Standards(AFS)について、食品安全性とトレーサビリティの信頼性を確保する要件を考察した。AFSは、イギリス農産物の大半を包括する最大規模の農産物認証システムである。組織構造、トレーサビリティ・システム、審査体制、認証基準を分析した。次の点がAFS認証水準の高さと信頼性を可能にしている。(1)農家は、独立の検査機関による外部審査が義務付けられている。(2)外部審査団体はAFSと利害関係を持たず、かつ審査能力が適正であることについて、審査団体およびAFSの双方は政府機関UKASから国際規格に対応したEN45011の認定を受けなければならない。これは、JAS有機農産物認証よりも厳格である。(3)農作業の各段階での詳細な記録保持が求められる。農作業の段階、薬剤・医薬品などについて、ロットごとに作業内容を追求できるよう記録保持が要求される。(4)詳細な記録保持こそがトレーサビリティ・システムの信頼性を確保する重要要素である。(5)認証基準は、サルモネラ菌など衛生検査、家畜用医薬品、種および配合飼料成分のトレーサビリティ、成長ホルモン不使用、家畜福祉、家畜輸送手続き、配合飼料認証システムなどにおいて、厳格な安全基準を要求している。第二に、気候変動による食料供給への影響、日本の食糧自給率の脆弱性を考察した。気候変動は、従来の予測を上回って急速に進行しており、気候変動が穀物生産に与える否定的影響は、従来予測よりもはるかに深刻である。食料自給率の低い日本の場合、近い将来、気候変動により農産物供給は不安定化する可能性が高く、食品安全に影響が生じる可能性がある。この点は、今後、考察を進める必要がある。
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立命館産業社会論集(立命館産業社会学会) 42巻1号(近刊)
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Ritsumeikan Social Sciences Review Vol.42, No.1(in print)
立命館産業社会論集(立命館産業社会学会) 第41巻第2号
ページ: 15-37.
『消費経済学体系3・消費者問題』第9章(呉世煌, 西村多嘉子編) (慶庖義塾大学出版会) (所収)
ページ: 189-214.
Ritsumeikan Social Sciences Review Vol.41, No.2
ページ: 15-38