大量生産-大量消費-大量廃棄という従来型の経済システムは、循環型社会システムへの移行を迫られており、わが国をはじめとする先進諸国において、緊急の課題の1つとなっている。本研究では、それを循環型ロジスティックス・チャネルという観点からとらえ、そのシステムがうまく作用するためには、どのようなガバナンスメカニズムが必要であるかという角度からこの問題に取り組んだ。従来の商品の流通であるチャネルをフォワード・チャネルとし、商品の消費後の廃棄物を出発点とするバックワード・チャネルあるいはリバース・チャネルが、フォワード・チャネルと結びつくことによって、その循環を循環型ロジスティックス・チャネルとして概念化した。さらにこのロジスティックス・チャネルは、そのフォワード・チャネルとおなじチャネルを基本的に逆流する「閉じたロジスティックス・チャネル」とフォワード。チャネルとは別のルートで逆流する「開いたロジスティックス・チャネル」に分類され、それぞれの特徴が示された。 次に、このそれぞれのロジスティックス・チャネルにおけるガバナンスメカニズムの違いを明らかにするために、それぞれのチャネルにおける参加主体の違いと、そこでの役割の違いが、それぞれの参加主体の行動原理や目的意識の違いを基礎として、どのようなガバナンスメカニズムの違いとなっていくかについての分析を行った。この分析を確かめるために、研究期間中に行ったいくつかのヒアリングに基づく事例研究をはじめ、インターネットや各種文献・資料を通じて収集した事例を取り上げながら、そのガバナンスメカニズムについて論じた。 市場(価格)、ヒエラルキー(権限)、ネットワーク(信頼)という3つの基本的ガバナンスメカニズムのタイポロジーを使いながら明らかになったことは、それぞれがそのガバナンスメカニズムとして独自性を持ちながらも、そのどれか1つが使われるという排他的な関係ではなく、現実にはそのいずれかを基本としながらも、他の2つを補完的に組み合わせるという重層的な関係としてとらえるべきであるという結論が得られた。
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