本研究は、消費文化の受容について考えることを目的としている。分析対象として日本で活発に行われている西洋文化としてのクリスマス消費を取り上げる。クリスマスが広がり続けているということは、日本の消費文化が西洋文化への均質化に向かっていることを意味するのだろうか。それとも、日本人は西洋文化をめちゃくちゃに破壊して好き勝手に消費しているのであろうか。具体的には、消費文化の受容に関する(1)既存の分析枠組みを批判的に検討し、(2)新たな枠組みを提示し、(3)本研究が提示する枠組みを経験的に検証することを目的とする。 これまでの議論は、西洋文化に日本文化を従属させる(グローバル論者)、あるいは日本文化に西洋文化を従属させる(伝統論者)といった「西洋中心の文化帝国主義モデル」であり、文化を本質的なものとして捉え、日本の文化状況を均質化に行き着くものとして理解していた。 ところが、消費文化の受容過程に目を凝らすと、実際は、文化は西洋か日本かのいずれかに均質化していくわけではない。本研究が依拠する変容論者は、消費文化の受容を日本人が主体的に異文化を受け止め利用していく過程(=文化の再生産)と捉える。 本研究は、ビデオグラフィーというマーケティング論や消費者行動論では新しい方法論を用いて、文化の再生産には、2つのしかたがあることを経験的に明らかにした。1つは西洋をなじみのあるものに変えるしかたである。もう1つは西洋を西洋のまま維持するしかたである。このことから、日本の文化は、均質化に向かっているものとしてではなく、異類混交とした状況にあるものとして理解されるべきである。
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