本年度は、当初計画通り、理論構築と企業実務調査を行った。理論研究においては、その中心を管理会計及び環境工学とした。特に、管理会計研究では、最新の環境管理会計の文献等に基づき、多種多様な環境関連業務の発生によってどのような管理会計システムが必要となるかを検討した。その結果、環境配慮設備投資プロジェクトごとにキャッシュ・フローの予測が必要となるが、従来のような発生の確実性を重視しただけでは適切な予測は不可能と考えられることが判明した。すなわち、予測の際に重要となるのは、確実性ではなく、企業の環境マネジメント・スタイルを前提条件として決定するべきなのである。これによって、多々錯綜する環境配慮設備投資効果を適切に予測する基礎を提供するものと考えられる。このような環境マネジメント・スタイルを前提に環境関連の各種業務活動を決定し、それによるコスト等をキャッシュ・フローとして予測するのである。次に、環境工学面については、環境に対する化学的な場当たり的な対応を越えて、エコ・マネジメントの視点が重要であることが明らかである。短期の局所的な対応ではなく、長期的かつ広範な対応が不可欠であり、それは最終的には地球環境規模にまで及ぶ壮大なシステムの一部として設備投資効果を検討するべきなのである。 本研究では、今年度、多数の企業訪問も行い、聞き取り調査などにより企業実務を明らかにした。それによれば、環境配慮設備投資の基本姿勢は様々であることがわかった。しかし、環境配慮を積極的に検討する企業の方が、一般的には収益性の高い優良企業であることが明らかとなった。それらは法律遵守については当然のことと考え、外的には環境報告書の作成・充実を積極的に行い、内的には内部環境会計データを整備し、企業経営の業績評価や意思決定に活用しており、それらが好業績に貢献していた。
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