本研究は、企業の環境会計とは異なる型で発展を遂げつつある自治体の環境会計について、その類型化や課題の検討を行い、自治体の施策の検証として環境会計を導入する方向性について考察しようとするものである。初年度である本年度においては、自治体の環境会計の一類型である水道局の環境会計(地方公営企業、特別会計部門)について、特に調査対象を政令指定都市に絞って調査・研究を行った。具体的には、まず、既に環境会計を導入している大阪市、名古屋市、福岡市、北九州市、札幌市などの環境会計担当者を訪問し、各都市が導入している環境会計の構成要素や考え方の違い、活用方法、政策のフォローアップや次年度施策への結果の反映などについての意見交換を行った。調査・意見交換によってもたらされた特に重要な論点は、環境会計の新たな活用方法として、地域独占型の水道事業の経営活性化のために、環境会計情報がもたらす指標(環境効率性、環境収益率など)を用いた地域間の情報比較が有用であることが確認できた点である。この水道事業における環境会計情報の比較可能性を中心内容にして、2004年11月に日本計画行政学会北海道部会で「水道事業における環境会計の展開」として報告を行ったほか、次ページ「研究発表」に記したように明治大学経営学研究所の『経営論集』に当面のとりまとめとして「水道事業における環境会計の展開-有用性と発展方向-」を発表した。本原稿は、政令指定都市の水道局の環境会計の概要も網羅しているため、他の地域における環境会計導入の参考資料とすべく、70余の地方自治体に送付した。その際、返信用書簡を同封し、アンケートの返信を依頼しているので、これを次年度の研究に生かしていくつもりである。
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