長期的ウィンドウでの会計情報の価値関連性と短期的ウィンドウでの会計情報の質を分析した。最初に、大規模なサンプルのクロスセクション分析を行った結果、1965年から2003年の39年間で、日本のGAAPにもとづく利益と簿価は、株式リターンとの関連性を堅持している。海外の実証結果と同様に、日本でも、会計データは、株式リターンのクロスセクションの変動を5%から20%程度の範囲でしか説明できない。個別会計データと株式リターンの関連性はいくつかの要因をコントロールしてもなお、低下していると推察できる。次に、会計情報と市場のマイクロストラクチャーの関連性をモデル分析した。投資家が私的情報を保有している状況で、会計情報の公表が価格のinformativenes、流動性、ボラティリティに及ぼす影響を合理的期待モデルの枠組みでモデル分析した。会計情報の質が高まるほど、価格のinformativenesが高まる。私的情報の質が高いケースは、それが低いケースよりも、会計情報の質が価格の流動性に与えるインパクトが大きい。価格の流動性は、会計情報の質、私的情報の質、ノイズ・トレーダーの取引量の分散に依存する。会計情報の質、あるいは、私的情報の質が高まるほど、価格の流動性は高まる。私的情報の質が低いケースは、それが高いケースよりも、会計情報の質が価格の流動性に与えるインパクトが大きい。また、他の条件が同じならば、ノイズ・トレーダーの取引量の分散が大きいほど、会計情報の質が価格の流動性に与えるインパクトが大きい。会計情報の質が高まるほど、価格のボラティリティは小さくなる。私的情報の質が高まるほど、価格のボラティリティは大きくなる。会計情報の質が価格のボラティリティを小さくする効果は、限界的に逓減する。
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