研究概要 |
上記研究課題の目的を果たすために、次の研究計画を設定した。 (1)米国証券取引委員会(SEC)による規制対象や規制目的はもとより各種規制の相互関連性と全体的規制動向について分析する。この分析を踏まえて、会計基準の収斂を主たる柱とした「2005年問題」,ないし「2007年問題」について、米国の見地からSECの取組みや規制動向について明らかにする。 (2)会計基準の収斂に関する「2005年問題」ないし「2007年問題」の規制動向のもうひとつの勢力であるヨーロッパ連合(EU)について、国際財務報告基準(IFRSs:国際会計基準(IAS)を含む)の取組みや規制動向について明らかにする。 (3)日本版SECの構築の可否について、韓国における規制構造や会計基準設定機構の実態調査結果をも踏まえて検討を行なう。 当該研究計画のもとでの調査研究の結果、EUにおけるIFRSsの強制適用に伴う会計基準の収斂に関する動向、ヨーロッパ主要国(イギリス、ドイツおよびフランス)の「2005年問題」への対応、SECの会計基準の収斂に対する取組みや規制動向などを検討し、会計基準の収斂の潮流と国際的規制動向およびその方向性を明らかにした。その成果は、杉本徳栄著『国際会計』(同文舘出版)において収録した。 日本版SECの構築問題については、(1)イギリスや韓国での一元的行政の事例研究、SECの機構と権限に関わる規制論議および(2)日本での新法の整備と行政機構の再構築の併用論議、の国際・国内の両面から検討を行なった。その研究成果は、「会計の透明性と日本版SEC」という論題で日本会計研究学会第64回全国大会(2005年9月16日、関西大学)において研究報告した(この研究成果は、追って『会計』に掲載される予定である)。日本版SECの構築問題を調査研究する過程で明らかになった韓国における規制構造や会計基準設定機構の実態については、先の著書『国際会計』にも反映している。加えて、韓国における会計基準の収斂に対する基本戦略や内部統制の規制については、韓国会計研究院と韓国上場会社協議会で報告書や規準が纏められており、各機関より許可を得てそれらを翻訳し、公表した。 EU域内上場企業によるIFRSs準拠の連結財務諸表は2006年より公表される。したがって、研究計画の一部(準拠すべき会計基準・開示基準の変更による「情報の非対称性」の軽減の対価として測定可能な経済的便益の存否の論証)は基本的に文献考証などの基礎調査研究にとどめており、当該問題の論証に向けて引き続き研究を行なっている。
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