本研究は、環境保全のために、NPOとコミュニティが地域の組織として、車の両輪の役割をはたしているということがしばしば指摘されているが、そのうちのコミュニティに焦点をあてて研究したものである。阪神淡路大震災の後、地元の行政や住民たちは、コミュニティの組織がチャラになったという指摘をしたが、そのチャラになったということは、また、一から組織をつくることで、この震災地域も参考にしながら、コミュニティの本質に実証的に迫ろうとしたものである。 調査には限界があり、実際は研究の初期の段階に止まっているのであるが、それでも「実践コミュニティ」の考え方を現実の事例をふまえながら提示できたことが大きいと考えている。また、コミュニティという明瞭な地域空間を利用する形で、さまざまな実践例について分析ができた。とりわけ、里川という発想で、地域社会の空間をどのように魅力的に計画できるかという点について、ひとつの試論が形成できたことも成果といえよう。 現在、「ガバナンス論」や「参画と協働」論が人口に膾炙されているが、それとは異なった、共和主義的な思想から、地域社会における公共というものについても検討を加えた。公共性とコミュニティという問題は深く大きな課題であるが、それを検討する糸口はつかめたと思っている。また、地域そのものをどのような原理で生かすかということが根本的課題であるが、地域と人を生かす原理についても言及をした。
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