1 文献等にもとづく研究 本研究テーマ(農家の存続戦略と資源)に関連する農村社会学、家族社会学、農業経済学等の必要な文献を収集し、解読した。それにより、日本農村社会学における家・村研究およびネットワーク等の新たな社会関係にかかわる諸研究を整理し、農家・農村の存続資源としての家・村・ネットワークに関する一定の枠組みを設定した。また、研究会等の機会を利用して、関連分野の研究者とディスカッションをくり返し、枠組みや仮説の再検討を行った。それらにより、次年度以降の実証研究に備えた。 2 実証にもとづく研究 数次にわたり、予備的な現地調査を行った。以下では主要なもののみを記す。 (1)熊本県阿蘇郡長陽村のNPO法人「阿蘇エコファーマーズセンター」で聞き取り調査をおこなった。同法人では、地元に根づいた新規参入者が後続の新規参入者のために研修の場を提供しており、従来の農村社会では見られなかったような新たなネットワークが構築されている。こうした社会関係に地付きの農業者をも巻きこむことにより、地域農業存続のための資源となりつつある。 (2)新潟県佐渡市の「大和田生産組合」に対する聞き取り調査をおこなった。この集団はいわゆる「定年帰農者」によって構成され、集落の農業を存続させるための欠かせない役割を果たしている。個別農家がゆるやかなネットワークを組み、高齢化・担い手不足が進む日本の中山間地農業を存続させるためのひとつのモデルとして注目される。
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