「福祉のまちづくり」運動で中心的な役割を果たした関係者が、東京都及び新潟県に在住していることを確認し、現地まで出向いてインタビューと関係資料の収集を行ない、平成16年度より行なってきた調査活動を完了させた。各地に散在した資料の収集と関係者への面接調査結果を踏まえ、「福祉のまちづくり運動」、そして「福祉コミュニティ」という発想の源流を再構成し、以下のような課題と展望を導き出すことが出来た。 物理的なバリアが解消されることで、身体障害者をはじめとする生活困難をかかえる当事者の発達・成長は、望ましい方向へと導くことができるのであろうか。その際、障害の種別はどこまで考慮が必要だろうか。地方行政が福祉施策として可能なことは、「物的環境整備」にとどまるのであって、それを越える生活権に関する部分については、国ないし当事者個人の「自己決定」「自己責任」という両極のいずれかに落ち着いてしまうのだろうか。各種行政的手続きを必須とする今日の福祉的支援においては、一人ひとりの当事者がかかえる生活課題や要求は、「煩雑な手続き」のなかに埋没する危険性にさらされているのではないだろうか。今日における「福祉のまちづくり」の課題である。 とはいえ、当時の「福祉のまちづくり」運動の成果まで否定されるものではない。身体等のハンディを抱えながら、収容型施設でその生活全てを完結させたくないとする障害当事者と、そうした考え方に共鳴する人々とのネットワークが当該地域社会へと拡がり、自治体行政を巻き込みながら展開した。声高に社会の変革を叫ぶのではなく、また健常者以上の能力を障害者に求めるのでもなく、あたりまえの生活を日常生活の場で営むことが出来る条件を捜し求めること。それこそが、仙台・別府両市における「福祉のまちづくり」運動から導き出された成果であり、今日における「福祉コミュニティ」形成に必要とされているのである。
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