本報告書は、様々な災害問題のうち、近年多発する都市水害を取り上げし、洪水対策の論拠である河川管理論に関わる問題として、「脱ダム宣言」で注目された長野市浅川ダム建設問題に関し、ダムの有効性や「脱ダム宣言」が提示される社会的背景等について考察した。 次に、ダム全面撤去の事例として注目を集めた熊本県八女市坂本の荒瀬ダム撤去問題について、その経済的側面に焦点を当てて考察した。 また、1995年の阪神淡路大震災の経験から、災害ボランティアに関する研究が重視されているが、平成12年東海豪雨災害の被災地の一つである愛知県西枇杷島町のボランティア活動を取り上げ考察した。また、この災害で救援活動に関わった、ある宗教団体の救援活動の記録を掲載し、その活動についてボランティア論の視点で考察した。 他方、上述の阪神淡路大震災の経験から、社会科学では災害研究への関心が大きく高まり、文字通り学際的な研究が広がってきたが、本報告書では上記の事例研究とともに戦後日本の社会科学の多様な流れの中で提示された「災害論」に触れ、河川管理の根本的思想についても若干の考察を加えた。 なお、巻末に第3章に関する史料と脱ダム宣言、第5章に関するボランティア活動の資料を掲載した。
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