研究概要 |
3年間のこの科研費に基づく研究は、「国家意識を中心とする社会意識の日英比較研究に基づく知識社会学的分析」という副題を持つ。第1に、時間的に、1960年代と90年代の時代比較を行うこと。第2に、空間的に、主に日本社会と英国社会における社会意識の比較研究(およびそれに関連した第3の比較対象群を含む)を行うこと。第3に、国家意識を核とする社会意識に焦点化することで社会意識研究の深化を目指すこと。以上が内容である。 本年度(〜平成19年3月31日)の研究計画は、日本と英国以外に、第3の比較対象群として最終的に、国土・国民の量的な特性を持つ中国とシンガポールに焦点化するとしていた。そこで、中国に関しては、南京大学および淅江大学の社会学研究者からの情報収集に努めた。改革開放後で市場経済を優先する国家および社会学のあり方に関.して、とくに儒教や文化遺産を活用したナショナリズムの現状と一種の経済至上主義的な社会科学批判を中心に貴重な意見を得た。またシンガポールに関しては、シンガポール国立大学を中心に聞き取りをおこない、グローバル化と国家に関して、とくに人権の問題に関して貴重な情報を得た。なお、こうした第3の比較対照群に関連する地域として、香港・台湾、およびマレーシアをはじめとする東南アジア諸国も射程に入れて検討を進めた。その結果、アジアにおける「3P」問題、つまりPopulation(人口),Poverty(貧困),Pollution(汚染)の問題が重要で、それらの解決のためには、「2P」つまりPeace(平和)とPartnership(協力・協働)が必要だという知見を得た。最後に、知と社会意識の領域では、日本の1960年代は、自国の経済発展に関心が閉じられていたが、90年代には,グローバルな視野を持ち始めていることをさまざまな面で明らかにできたことを付け加えておく。
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