研究概要 |
平成18年度は、本科研費研究の国家意識に関する研究課題の遂行のために、海外には、1)中国の南京大学、2)マレーシアのマレーシア国立大学、3)オーストリアのインスブルック大学に赴いた。とりわけ、中国およびオーストリアにおいては、それぞれの機関で学生・研究者に対して複数の講演を実施し、また当地の関係社会学者とかなり突っ込んだ社会学的国家論の議論ができた。すなわちそれは、グローバル化を価値中立的な概念として提出する意義、グローバル化時代に対応した脱国家的な方向性をもった社会学的な近代国民国家論の展開、そしてそのための現象学に影響を受けた問主観性論をもとにした人際(にんさい)関係構築へ向けた土台作り、の意義を持った。またシンガポール国立大学のブライアン・S・ターナー教授などを名古屋大学に招聘し、講演を中心として情報提供いただいた。彼の『被傷性(傷つきやすさ)と人権(Vulnerability and Human Rights)』に関する理論志向性は、申請者の間身体性論を基盤とする間主観性論の社会学的展開に非常に近く、今後の研究協力を約束できた。なお、直接的には今年度の研究実施計画とは関わらないが、今回の科研費の成果を十分にふまえて、フィリピンにおける国際社会科学連盟の大会での講演、および韓国・慶尚大学における倫理教育学会での招待講演を行うことができた。以上が研究成果であるが、これらを基にして各種の論文作成、著書作成,学会報告などをおこなったことを合わせて記しておきたい。
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