本研究の目的は、グローバリゼーションのもとで、「官から民へ」「国から地方へ」の動きが着実に進行し、地域社会のあり方が大きく変化しているなかで、生活の基本である医療・福祉の分野を事例に、公と私の役割分担の変化などの公共性の変容を研究することにある。 本研究は、医療や福祉、教育サービスは、他の市場サービスと同じなのか、それとも特殊性があるのかという問題設定のもとで、行政と民間との関係のあり方について研究を進めた。教育や医療、住宅の分野で民営化、規制緩和が問題なのは、教育や医療は地域社会のなかで多くの機能を果たしているからであり、供給主体が行政であろうが民間であろうが、大変困難さをともなう事業であるというものである。このままでは、行政と民問で、責任のなすりつけあい、押し付け合いになる。そこから、行政と民間の協働が課題になり、コミュニティのあり方、NPOと専門職の果たす役割が重要になるのではないか。 本研究は、この仮説を医療・福祉、子育て支援の分野で検証した。 医療と福祉の連携で、専門職の役割として重要なのは、地域住民の二一ズを把握することである。そのためには、地域に根ざして、地域のことをよく知っていることが必要である。地域にどういう産業かあるのか、どのような人が働いているのか、どのような交通体系であるのか、どのような教育施設があるのか、どのような住宅問題があるのかによって、医療のあり方も異なる。医療機関は地域社会と大きく関連しており、地域医療も病院だけでは解決できず、行政や住民との関わりのなかでまちづくりとして進める必要があることが確認された。
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