本研究は、景観問題の発生とその社会的メカニズムの解明をテーマとするものであるが、平成18年度における調査研究から、以下のようなことが明らかになっている。 1.景観問題が一時的・一過的なものとして収束せず、持続的な社会的関心事として社会問題化するケースにおいては、景観問題として当初発現したものが、潜在化していた場所をめぐる問題を顕在化させるという展開が見られる。即ち、開発による現状変更は景観をめぐる意見の対立を生じさせることになるが、この当初の意見対立を契機に、場所の在り方そのものをめぐるより深刻で広範囲に及ぶ問題状況への展開が見られるということである。 2.新たに顕在化した場所の在り方をめぐる問題は、「再発見」とか「活性化」とか、更には「地域づくり」とかをキーワードとした言説の応酬をともないつつ、「場所の保全」対「新たな場所の創出」という論争基軸が形成されることとなり、容易には解消され得ない対立状況・緊張状況が生み出されることになる。 3.こうした対立状況・緊張状況は、場所への関心が新たに喚起される社会的コンテキストとなり、景観に対する感受性を高め、容易には枯渇し得ない論争状況を醸成し、こうした状況下で景観問題はより鋭敏で対抗的な応酬を伴う持続的な社会問題となる。 4.上述のような「景観問題の発現」-「場所をめぐる問題の顕在化」-「景観問題の持続的な社会問題化」という継起的な展開過程においては、陽所をめぐる問題」(「場所問題」)の顕在化という事態が注目されねばならないが、ここに景観問題を場所問題という視座から再把握するというアプローチが成立することになる。
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