ヴェーバーは『社会学の基礎概念』の冒頭で、自らの理解社会学の認識の対象と方法を規定して次のように述べている。 「社会学とは、社会的行為soziales Handelnを解釈しつつ理解しdeutend verstehen、それによってその行為の経過と作用とを因果的に説明するursaechlich erklaeren科学のことである。」 この規定は、理解社会学が優れてドイツ的な思考伝統である歴史主義に由来するものであることを如実に物語るものである。「解釈しつつ理解する」ことが、歴史学の特殊な方法であることを最初に強調し、その方法論を積極的に展開したのは、ドロイゼンであるが、ヴェーバーはその方法を自らの「現実科学」としての社会学にも適用しようとしたのであり、そのために「行為」の「主観的に思われた意味」の「理解」に不可欠の「意味解釈Sinndeutung」の手法まで考案している。 行為は現実的なものであり、その意味で歴史的な事象であるから、「行為の意味」の解釈は「歴史の意味」の解釈に直結する問題地平を含んでいる。しかも、「行為の意味」は一定の規範的基準としての「価値理念」と、それを中核とする「世界像」なしには生じ得ないとするヴェーバーの見方は、歴史主義を相対化する「歴史主義的啓蒙」の思想のいわば嫡出子とみなしうるのであり、彼が「世界宗教の経済倫理」の分析と「合理主義の類型論」の構成において多大の成果を挙げたのも、おそらくそうした彼の独自の立場に由来する。ヴェーバーの理解社会学は、歴史主義から生まれた一個の鬼子として規定できるように思われる。
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