平成17年3月23日、大分県日田市郡6町村(日田市・天瀬町・大山町・前津江村・中津江村・上津江村)は編入合併により合併し、日田市となった。本研究は、この合併を事例として市町村合併が地域福祉社会に及ぼす影響について明らかにすることを目的としている。 市町村合併は基本的には基礎自治体の合併である。このため合併による福祉行政組織や福祉行政サービスの変化を重視し、合併前後の比較調査を行った。また、福祉行政組織や福祉行政サービスの変化は住民生活や地域社会に多大な影響を与える。そこで、民生児童委員・地域審議会委員へのアンケート調査により市町村合併に対する住民評価を調査し、さらに、民間福祉団体への影響を明らかにするため社会福祉協議会の調査を実施した。 行政調査と住民評価調査によって明らかになったのは、以下のような点である。(1)各町村の福祉行政組織のほか大分県社会福祉事務所、日田玖珠広域市町村圏事務組合が担当していた福祉事務が日田市に一元化された。(2)合併の結果、旧郡部からみれば福祉行政組織は拡大し、細分化・専門化された。(3)旧町村部の福祉行政サービスは現状維持のものが圧倒的に多くなっている。(4)福祉行政サービスの変化パターンのなかでは低下したパターンよりもむしろ向上したパターンが多く、旧町村部の福祉行政サービスは全体としてはむしろ向上した。(5)にもかかわらず、旧町村住民の多くは合併により福祉サービスは悪化したと捉えている。 福祉行政サービスの実態と住民評価との間に大きな隔たりが生じた原因の一つが社会福祉協議会の合併にあることが、社協調査から明らかとなった。すなわち、合併により社会福祉協議会の職員数が減少し、行政からの受託金が大幅に減額した。このため多くの受託金を受け取っていた旧郡部町村の地域福祉サービスは薄く広くなり、大きく低下することとなった。
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