研究概要 |
平成18年度の主たる研究は,愛知県内の自治体の外国人施策の比較研究である。外国人施策の実施状況を各部局に郵送でたずね,その後,統括する部局を訪問し,各市町の外国人施策がこれまでどのように展開してきたかを聞き取り調査を行った。その数は26市町である。また,さらに比較研究の幅を広げるために,東海地区の外国人集住都市会議参加自治体の四日市,鈴鹿,さらに飯田市で同様の調査を行った。現在,その結果をとりまとめているところであり,その成果は平成19年度の日本地域社会学会大会で口頭発表,さらには紀要等で論文としてまとめる予定である。現在までの分析では,「多文化共生」という理念のもと,国レベルや県レベルでは,施策の基本方針が出されてきたが,それが,決して,市町レベルまでは浸透しておらず,市町レベルでは,基本方針なきまま、「外国人問題」対策の色が濃い施策が展開されているにすぎないとことが明らかになっている。また,関西の自治体ように在日韓国・朝鮮人への施策の積み上げも愛知県にはなく,1990年以降になって,その場しのぎ的な施策展開がされてきたのである。今後,「多文化共生」の理念,また,定住化傾向が明らかになった現在,外国籍住民をどのように統合していくのかを視野にいれた施策が必要とされよう。 さらに,これまでの西尾調査の補充調査も継続して行ってきた。主として,ブラジル人住民たちへの聞き取り調査を行い,日本社会にどのように定住しようとしていくのかについての考察を深めてきた。日本に定住するための条件,ブラジル人たちが定住するために展開する戦略は何かについて考察を行っている。様々な条件の中でも,特に,第二世代である子どもたちの成長との関連に注目してきた。これは,ひいては,外国籍児童・生徒たちの教育問題ともつながる問題であり,今後,この点について,さらなる考察を深めていきたいと考えている。
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