研究課題/領域番号 |
16530335
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
進藤 雄三 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00187569)
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研究分担者 |
佐藤 哲彦 熊本大学, 文学部, 助教授 (20295116)
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キーワード | 医療化 / 逸脱 / 遺伝子化 / 生物医療化 / 市場原理 / 消費者志向 / AD / HD / アルコホリズム |
研究概要 |
今年度は、主に逸脱の医療化の理論的検討、事例としては多動症AD/HD、およびアルコホリズムに関して、日本とアメリカを対象に研究を進めた。またその基礎作業として、特にアメリカにおける市場原理の医療領域への浸透を、製薬企業のPR活動と薬の処方の統計とを検討した。 現段階において、理論的にみて重要な点は、第一に、90年代におけるヒトゲノム計画の進展以降の医療あるいは逸脱における「遺伝子化」genetizationという説明モデルの研究領域における進展であり、第二に、これと連動した、逸脱の医療化を領域的に凌駕する全般的な「生物医療化」bio-medicalizationの進展であるということができる。研究の焦点は、「逸脱の医療化」にあるとはいえ、医療領域におけるこうした一般的動向は、70年代における「逸脱のノーマライゼイション」ともいうべき過程をより全社会的水準において展開させる潜勢力を持っており、しかもそれがいわゆる「専門家支配」professional dominanceという形式においてというより、消費者の側の選好(「消費者志向」consumerism)とそれに呼応する市場原理という形式において展開されつつあるという点において、現代における「医療化」は質的変化を遂げつつあるということができる。 事例に関して現段階において指摘しうることは、日本とアメリカにおける市場原理の浸透度と、「逸脱のノーマリゼーション」における許容度の相違である。すでにある程度指摘されてきたことではあるが、日本では医療領域への市場原理の浸透には根強い抵抗感が見受けられるし、また「医療化」という対処法に対する批判的な意識が認められる。しかし、一方で市場原理の浸透と医療化への許容度の増大という側面も同時に観察され、社会学的はこうした動向と対抗動向とのバランスが実態としてどのような配置をとっているのか、そしてまたそこに両動向にどのような質的変容が見られるかどうか、その変容が日本文化社会論にとってどのような含意を持ちうるのかを、丹念に精査する点にあるというべきだろう。
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