研究概要 |
1 逸脱の医療化の比較分析のための理論的基礎作業として、特にパーソンズ社会理論に依拠して、医療化の歴史的・社会的意義を検討した。(進藤雄三『近代性論再考--パーソンズ理論の射程』世界思想社,2006 第6章) 2 医療化論の近年の動向を概括し、特に「生物医療化」biomedicalization概念と「遺伝子化」genetization概念とを整理した。(進藤雄三「医療化のcodificationに向けて」第21回社会病理学会大会報告,2005) 3 個別領域として、アルコホリズム、AD/HD、PMS、薬物常用、CFS等に関して、日本、アメリカ、イギリスにおける実態比較のための分析および資料収集が進められている。(1)アルコホリズムとAD/HDに関しては、主に日米におけるセルフヘルプ・グループの比較と医療専門職との関わりを中心に分析を進めており、(2)PMSでは日米における教育と医療との相互関連と薬の処方という観点から資料を収集している。このうち、AD/HDに関しては、特に日本の教育政策に関する研究に重点を置いた分析を行っている。(3)薬物常用に関しては、日本・イギリス・アメリカの医療政策・司法制度との関連においての分析が進行中である。(4)また、CFS(慢性疲労症候群)に関しては、日本の企業人を対象とした疲労調査を行い、その報告書を作成中である(2006年5月刊行予定)。こうした個別領域における成果を目下編著としてまとめつつあり、社会学的医療化論のパイオニアであるコンラッドの医療社会学部会賞受賞論文の翻訳を組み入れた『医療化のポリティクス--近代医療の地平を問う』(学文社)を2006年9月に刊行する予定である。
|