研究概要 |
1 逸脱と医療化の国際比較の概要として、主に日本の事例を中心に、アメリカ・イギリスとの比較を行った論稿と、逸脱の医療化の理論的・歴史的考察および薬物政策・障害・心神喪失者等医療観察法などの主要テーマをとりあげた社会病理学会のシンポジウムと連携した成果を、書籍として公刊した(森田洋司・進藤雄三編『医療化のポリティクスー-近代医療の地平を周う』学文社、2006)。また特に薬物に関しては研究分担者の佐藤が,日本における歴史社会学的な総合的考察を公刊した(佐藤哲彦『覚醒剤の社会史』東信堂、2006) 2 アルコール依存症、児童虐待、AD/HD、月経前症候群(PMS)、などに関しては、基本的にアメリカ起源の診断・対処法が日本にタイムラグを伴って導入されるが、事例による相違は認められるものの、概してアメリカほどの医療化の進展はみられず、イギリスは日本とアメリカの中間的進展を示す、という傾向が認められた。 3 特記すぺき知見としては、1)薬物政策の国際比較を通しで日本・アメリカ・イギリスに共通した「経済化」論理が指摘しうるという論点、ならびに2)心神喪失者等医療観察法の事例研究を通して、日本における精神医療の「治安的」機能の特性が見出されたという論点、さらに近年の日氷における特色とし七、3)教育政策の文脈におけるひきこもりぐ不登校、AD/HDなどの児童をめぐる社会的対処法において、「医療化」が日本の治療文化を背景に教育制度・医療制度と連動してユニークな社会現象を生み出しつつある、などが挙げられる。
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