1.互助行為と「公益」「共益」「私益」および「シマ社会の原理」との関係について ユイ(互酬的行為)、モヤイ(再分配的行為)、テツダイ(支援的行為)という互助行為は「共助」を中心に「公助」や「私(自)助」の領域と重なる三叉構造として捉えることができる。また互助行為がもたらす利益という点では、「公益」が強いと個人の利益が犠牲になり、逆に「私助」が強いと地域全体の利益が損なわれる。このため「共益」を軸にした両者のバランスが欠かせない。さらに島嶼地域の互助慣行の分析から、共有地(コモンズ)としての島、強い互助ネットワークと互助精神という特性を「シマ社会の原理」として規定した。 2.現代日本社会の構造原理と互助社会のシステムについて 「イエ集団」と「ムラ社会」の各原理に加えて「シマ社会の原理」から、島国日本の社会構造を捉えることできる。共感(同感)に基づく信頼ネットと協力ネットを基底にした構造を互助行為のシステムはもつが、日本的な社会特性としてそこに「甘え」の関係が入ると、他者への依存傾向が強まる。また近代化により互助意識が希薄になるとき、共有地(コモンズ)を互助ネットワークの結節点(資源)として捉えると、それは「公」と「私」領域に対して「共」領域として重要な意味をもつ。このような分析を通して現代互助社会の再生条件を、ヒト(互助精神)、モノ(共有資源)、カネ(共益経済)、組織(共生互助組織)、情報(生活の知恵)から整理することができる。 3.日本とアジア諸国の互助社会の比較について ベトナムの現地調査では、かつての日本のムラ社会同様米を出し合って生活を支える「米講」のようなものがあり、相互扶助の慣行が自生的な社会秩序として存続してきた。
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