1.互助の類型化と近代及び現代社会の互助ネットワークの事例研究 日本の互助行為はユイ(互酬的行為)、モヤイ(再分配的行為)、テツダイ(支援<援助>的行為)に大別され、この種の「助」行為を「公助」、「互(共)助」、「自助」と「公益」、「共益」、「私益」の関係から浮き彫りにした。また互助組織の形態(組、講)と近世及び近代の互助制度を分析した。さらに沖縄の本島や先島諸島、奄美、隠岐、佐渡、平戸諸島などの調査から「シマ社会」の互助ネットワークを明らかにした。なおアジアにも見られる互助慣行はベトナムなどで関連資料を収集したが、国際比較は今後の研究課題である。 2.日本の「共益社会」の構造原理の抽出と現代ボランティア社会への提言 現在日本はNPOの活動など「社会のボランティア化」が進行しているが、これは社会の基層に存続する互助行為の新たな現れと捉えることができる。伝統的な互助ネットワークの変容であるが、こうした互助行為の継承を通して共に利益を分かち合う「共益社会」を主張した。さらにそれはグローバルなレベルでの「共益社会」も示唆することができる。 3.研究成果としての『互助社会論』(世界思想社、平成18年)の出版 本研究の成果として『互助社会論-ユイ、モヤイ、テツダイの民俗社会学』を出版した。その目次は第1章「互助社会の原点」、第2章「互助行為の内容とシステム」、第3章「互助組織の種類と変動」、第4章「近世と近代の互助組織」、第5章「沖縄の互助社会」、第6章「本土島嶼の互助社会」、第7章「現代日本の互助社会」である。この他平成17年6月にハンガリーのブタペストでSASE (The Society for the Advancement of Socio-Economics)と平成18年7月に南アフリカのダーバンでISA (International Sociological Association)の両学会、さらに同年10月日本社会学会で互助ネットワークの報告をした。
|