平成16年度の科研費による調査では、仙台市泉区根白石地区における様々な宗教現象を対象に実態調査を行なった。すなわち、当地における契約講や宗教講、神社のような「伝統的宗教習俗」と、地域寺院や各種新宗教のような「新旧教団仏教」等の調査である。 まず、伝統的宗教習俗の残存する地域での研究実績を示す。契約講や宗教講は衰退化の傾向が著しいが、変容を被りながらも現代に残存する形で残存している。契約講は葬儀契約講として機能を特化させつつも、その機能は益々衰退する傾向をみせる。同じく宗教講も、その象徴的機能を特化させつつも、地域に独自な形態で存続を果たしていることがわかった。次に、当該地域における各級神社に関する文献および聴き取り調査も実施した。周知の通り、我が国においては、明治末年から一村一社制を原則とする神社合祀が三重県を中心に全国的に展開されたが、根白石地域においては必ずしも原則通りの合祀は行なわれなかった。今回の実施調査でも、史料上は合祀されなくなっている筈の社殿が現実には現存していたりすることが判明した。さらに、新来住者の葬祭行動に関する調査も実施し、葬祭契約講や葬祭業者から情報を得たり、寺院や墓苑から情報を入手している。この関連から、旧教団仏教の根白石における寺檀関係の動態について、寺院の特殊性と地域の社会状況を考査して検討することが可能となった。 新しい教団仏教については、根白石地区在住の創価学会員へ、宗教的排他性に関する質問紙調査が行なわれた。当教団が抱える伝統的宗教習俗との葛藤や、都市的生活様式に親和性のある教説が、伝統地域でいかように解釈付けされているかが調査結果より明らかにされるはずである。さらに、立正佼成会の支部長等から聴き取り調査も実施した。今後、プライバシーを尊重しつつ、次年度の調査では、さらに地域間の比較を念頭に、伝統的宗教習俗と新旧教団仏教に関する重層関係について調査を進める計画である。
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