研究課題
基盤研究(C)
広島県福山市内海町(田島と横島の2つの離島から構成される)を調査対象地域とし、質的調査方法によって、1945年以降の当該地域社会の変容過程について、下記のことを明らかにすることができた。祭礼の変容過程は、地域社会における「Social Capital」「人と人との関係性の資源」が再組織化されていく過程、個人史と地域社会の連関構造をあらわしているものであった。戦前の移民経験者と家族の、戦後におけるキャリア・コース、および当該地域社会に出現した造船企業下請企業経営者の経営者層への職業移動・到達過程は、この地域における非安定雇用部門に組み込まれた労働者が再生産されていく仕組みを説明するものであった。このように、地域社会の住民の社会関係が再編成されることは、地域社会にコンフリクトを発生させる。そのあらわれとして、広島県福山市内海町では、1970年代後半〜80年代前半に、LPG基地建設反対運動が起きた。LPG基地の負の影響をうける受苦圏に該当するとの認知は、住民の間に、反対運動を組織化させていくことになった。このようなコンフリクトの意味を本研究では歴史的視点から明らかにすることができた。このような、近代における造船業を地場産業とする地域が、20世紀後半の経済不況にともなって、さらに、産業構造・就業構造・生活構造が変化していく様相について、瀬戸内海の調査地域と英国の地域社会との比較研究を行い、日本社会の特徴について、明確にすることができた。
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