二〇〇四年一〇月、追加で本研究課題が採択された。早速、「研究計画調書」での研究計画のとおり、主につぎの二点を中心に研究をおこなってきた。 一、(1)日本の高齢者の生活・福祉に関する研究書および(2)在日外国人・華僑に関する研究書を注文し、関連研究の到達点と限界を調べ、本研究にとって啓発になれる内容を分析してきた。先行研究を分析して、非常に明白なことは現在での日本の高齢者研究、社会福祉研究において、ほとんど日本人の高齢者を対象にしている。外国人の老後生活の実態、老後問題に関する研究は空白である。当然、<老年期の華僑>に関する研究も皆無である。国際化・グローバル化の時代になっている今日の日本社会には極めて相応しくない研究状況である。<老年期の華僑>に関する学術的研究はまさに時代の要求になっている。 二、日本での有名な華僑団体の一つ・「崇正公会」と「国際客家協会」の活動に参加し、老年期の華僑の現状を参与観察してきた。そのうち、現在の収入状況、家族関係、近隣関係などを中心に聞き取り調査を行ってきた。日本語でうまく表現できる華僑は日本語で語ってもらった。日本語がうまく表現できない場合は客家語や北京語(中国語)で語ってもらった。テープおこしや、客家語や北京語での原稿を日本語で訳する作業をしてきた。各華僑の実情は異なるが、つぎの二点の共通点が見られる。(1)老年期華僑がもつ中国的文化の要素は調査する前に想像したほど、強くない。家族での親子関係は多くの場合、すでに「日本化」し、つながりが薄くなっている。(2)老後の華僑は日本社会とのつながりが薄い。まさに「精神の島」にある。これらの成果の一部は「日本における老年期華僑の生活実態」としてまとめた。
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