平成18年度では、引き続き<老年期の華僑>の老後生活・介護状況・死の受容状態について実態調査を行った。これまでの参与観察や聞き取り調査で得た資料をまとめ、文章化し、レフリー制の学会誌への投稿を行った。投稿はレフリーの審査を通過した。現段階の調査研究ではつぎのことが明らかにされた。 <1><老年期の華僑>の老後生活の格差が大きい。一つめは所得面での格差である。日本に入国したときの年齢や日本での職業によって、公的年金保険制度への加入状況が異なる。国民年金に加入していない華僑もいる。彼らの老後生活は子どもの仕送りや自分の貯金に頼っている。商売などで成功した華僑は国民年金に加入していなかったにも関わらず、快適な老後生活を送っている人もいる。二つめは社会的ネットワークへの参与能力の格差である。来日前の出身家族の状況、学歴、職業、才能などによって、社会的ネットワークを参与する力やそれを作る力が異なる。華僑によって地域別などの華僑団体の活動を参加する積極性が異なる。インタビューした事例のなかで、ある老華僑は組織の才能に恵まれ、自分でつぎつぎと華僑組織を作り、組織を通じて華僑社会、台湾・中国大陸とのネットワークを拡大してきた。 <2><老年期の華僑>の多くは日本を第二の故郷としている。まず、二世の華僑の国際結婚の増加である。二世の華僑の国際結婚に関して、二世の華僑自身は勿論、一世の華僑も中国系以外の人(例えば日本人)との結婚に抵抗が明らかに薄くなっている。二世の華僑の日本人との結婚は日本での永住を意味する。つぎ、死後、日本での埋葬を希望している華僑が増加している。老華僑は彼らの亡くなった親たちに対しては台湾・中国大陸で墓をつくってあげたか、あるいは日本でも造り上げた。これに対して、老華僑自身の死後に関して、多くの方は日本での埋葬を希望している。主な理由の一つは二世の子どもが日本を生活の場所としているからである。亡くなった華僑は「中華義荘」という中国人の墓地だけでなく、日本人の墓地で埋葬するケースも多くなっている。
|