研究課題/領域番号 |
16530348
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷 正人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40208476)
|
研究分担者 |
難波 巧士 関西学院大学, 社会学部, 助教授 (20288997)
北田 暁大 東京大学, 大学院・情報学環, 助教授 (10313066)
丹羽 美之 法政大学, 社会学部, 専任講師 (00366824)
|
キーワード | 社会的コミュニケーション / 文化・社会意識 |
研究概要 |
この1年間の研究でわれわれが共有しつつある仮説は、テレビ・メディア史における「1970年代」の重要性である。1970年代においてテレビはメディアとしての自己準拠的な空間を形成したのではないか。それまではテレビは、芸能やスポーツや日々の出来事をひとびとに伝達すべき透明なメディアとして社会的に機能していた。しかし1970年代を通して、テレビはメディアとしての不透明性を露わにし、その不透明な厚みに視聴者が無意識的に気づくようになる。そこではテレビ自体が欲望の対象になるのだ。例えば研究協力者太田省一は、研究会の発表でテレビ文化としての歌謡曲が70年代に成立したことを明らかにした。70年代の歌謡曲文化とは、商品としてのアイドルがプロダクションの戦略に基づいて不自然に歌わされていることを視聴者が楽しむ文化だった。それが60年代までに興行界を中心に成立していた歌謡界の体制を切り崩し(つまりテレビ番組はそれまでは歌謡界の秩序を伝達していたにすぎない)、テレビ文化として自律した歌謡曲文化を新たに成立させたのである。ただしそのとき視聴者と製作者はどこかですれ違ったまま遭遇していた。このテレビ文化の自己準拠性に視聴者が共犯関係的に参入していくのが1980年代である。この1980年代的な内輪としての「ギョーカイ文化」が、現代に至る日本のメディア文化を規定していくことになるのは、研究分担者の北田暁大が、『嗤う日本のナショナリズム』において、テレビを含むより広いメディア文化論の射程で明らかにした通りである。来年度はわれわれはこの大きな歴史的布置をめぐって、それぞれの分野でより精緻な研究をしていくことになるだろう。
|