本研究は、(1)日本の労働市場政策および日本人の働き方をライフコースの視点から分析し、日本側の特徴を把握しつつ、(2)これを比較対象としながらオランダの労働市場におけるライフコース政策の動向を明らかにする、という計画に基づいている。これに従って、2004年度は、主に二つの作業を行なった。 第一は、日本およびオランダの労働市場政策に関する文献の収集および知見の整理である。日本に関しては労働政策研究・研修機構によってまとめられてきた既存の文献を中心に収集し、知見の整理をおこなった。またオランダについては、海外文献をインターネットなども含めた媒体から入手し、オランダの最近の労働市場政策とライフコース・パースペクティブの動向について知見の整理をおこなった。またエラスムス大学経済学部のJ.A.Stam教授の来日に伴い、オランダの最近の労働市場と労働者生活の質(Quality of Life)に関する情報をヒアリングにより入手した。 第二は、日本の労働生活とライフコースに関してミクロなデータの分析を行なった。データはシニアプラン開発機構によって実施されたサラリーマンの生活スタイルに関する調査(16700名)を用いた。特に今年度は、シニア期にあたる男女の就業行動と生活スタイルに関して分析を行なった。この中で、中年期から高齢期にかけての人生の移行期において、職業生活からの引退と生活の再編の実態を明らかにした。 以上の二つの作業により、日本の労働市場および労働生活の傾向をつかむとともに、オランダとの比較が可能な仮説モデルの構築の検討を行なった。
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