1.本研究はイギリス、アイルランド、アメリカ、カナダにおける19世紀末の人口センサス(国勢調査)をデータとして、欧米社会における19世紀から20世紀の伝統的家族を数量的、比較家族史的視角から追究することを目的としている。しかしこれまで研究代表者が検討してきたアイルランド人の移民に視点を移動させて、イングランド・ウェールズ、スコットランド、アメリカ、カナダへのアイルランド人移民とネイティブな家族の比較を中心に分析作業を行った。それは各国の家族構造を明らかにするにはアイルランド人移民とネイティブな家族との比較検討が有効であるというスタンスにもとづいている。 2.アイルランド人移民の分析にはプシュ・プル要因の概念に立脚しているが、アイルランド人移民のプシュ要因を人口学的側面から明らかにすることができた。 3.アメリカのミネソタ人口センターで1881年のイングランド・ウェールズ、スコットランド、1880年のアメリカのセンサス、1881年のカナダのセンサスのデーターベースを入手することができた。そのデータ分析によりアイルランド人移民とネイティブなイングランド・ウェールズ、スコットランド、アメリカ人との家族構造を比較することにより両者の家族構造の特徴を析出することができた。しかし、カナダの1881年センサスには世帯主との関係の変数が欠如しているので今回は対象から除外した。 4.イングランド・ウェールズとスコットランドの研究成果をイギリス人口・家族史で権威のあるエディンバラ大学Michael Anderson教授を訪問し、その概略を報告したが、その成果に対して好評を得ることができた。また、アイルランドのトリニティ・カレッジのLouis Cullen名誉教授からも高い評価をいただき、本研究の研究成果報告書に研究代表者の評価文を執筆いただくことができた。
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