研究課題/領域番号 |
16530362
|
研究機関 | 恵泉女学園大学 |
研究代表者 |
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 助教授 (40282892)
|
研究分担者 |
佐野 直子 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (30326160)
中力 えり 和光大学, 人間関係学部, 講師 (50386520)
鶴巻 泉子 名古屋大学, 大学院・国際言語文化研究科, 助教授 (70345841)
|
キーワード | フランス / 地域文化 / 社会構造 / ブルターニュ / オクシタン / アルザス / コルシカ |
研究概要 |
本年度は、昨年度の研究で調査対象を絞り込んだ各地域の文化をテーマとしたフェスティバルについて、各自担当地域において半構造化インタビューを行った。調査から得た知見は以下のようになる。コルシカ(定松担当)のポリフォニーをテーマとした文化活動・フェスティバルは、1970年代にコルシカ語と同様に地域アイデンティティのよりどころとなる文化として「発見され」、再構築された。そして、地域主義運動と連動したことで盛隆を見せるものの、地域内部の政治的分断も示している。ブルターニュ(鶴巻担当)、のFestival Interceltique Lorientでは、ブレイス語を使用することは中心的テーマではなく、地域主義からビジネスへと展開されたケースに当たる。幅広い層を取り込む組織作りと90年代以降のケルトブーム、固有性を求める際に「私たちの伝統楽器はとてもグローバルな起源をもつ」など他の文化との連続性を重視して他の地域をも巻き込むことに成功している。オクシタニー(佐野担当)のRodezのEstivada(夏祭り)、BeziersのFesta d' Ocでは、オック語は非常に大きな要素であるが、それのみを主張しているわけではなく、行政側主導の「村おこし」の要も強い。したがって、そこには住民の意識との乖離が見られ、「トルバドールの寛容の精神」といった寛容、開放性、混合を特徴として持つオクシタン文化の散逸、疲弊がしばしば見られる。アルザス(中力担当)のFestival (Babel-1999,2000,2001)においては、政治的事情による市長(社会党)の創設であり、終わったのも市長の任期修了による政治的事情である。アルザス語を絶対的には重視しておらず、「アルザスとは、そもそもが混淆、通り道」であるというコンセプトを元に展開されたが、それが「アルザス文化を無視している」という批判をも起こした。 以上の調査結果から、それぞれの地域が、地域文化を語りながら、かならずしも同じ様相を示していないのは、各地域の政治的・歴史的文脈が強いことが確認された。また、「地域」をメタファーとして定義する可能性、非領域的な概念として使用する可能性も見出せた。政治・制度としての「行政地域」にもなりえ、「混淆の場」、「ナショナルな枠をこえていろいろなものと関わる場」という意味としても「地域」が使用されていることが確認された。さらなる地域の違いの要素の分析と「地域」概念の考察を来年度の課題とし、学会にて報告する予定である。
|