研究課題/領域番号 |
16530364
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
大出 春江 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (50194220)
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研究分担者 |
中村 美優 神戸大学, 医学部, 助教授 (40189064)
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キーワード | 看取り / 訪問看護 / 在宅死 / 病院死 / 湯灌 / 死後の処置 / 死化粧 / 訪問看護ステーション |
研究概要 |
平成17年度も昨年度と同様に、研究代表者、研究分担者、研究協力者4名による月例の研究会を実施した。今年度新たに実施したことは、夏期休暇と春季休暇を利用し、兵庫県(尼崎市と神戸市)と長野市で行った共同調査である。単独調査としては、研究分担者中村が、台湾の緩和ケア病棟の研究視察を8月1日〜8月4日にかけて実施した。同様に中村による単独調査として7月29日と8月18日に尼崎市在住の在宅の看取りを経験した家族へのインタビューを指導学生とともに実施した。定例の研究会ではこれらの調査データの分析、関連資料の検討を中心に、文献研究と情報交換を行った。書類やインタビューデータの共同保管と、研究者相互の研究交流をweb上でも継続して行った。 平成17年度の研究活動の内容と分担は以下の通りである。 1)研究全体の統括、および家政学書にみられる看取りと家庭看護に関する記述の収集。(大出)2)末期医療に関する先行研究の整理と、神戸を中心とした訪問看護ステーション、在宅で看取りを経験した家族へのインタビューの実施と連絡調整。(中村)3)長野市における訪問看護ステーションの活動に関する資料の整理と分析および長野市葬儀社へのインタビュー調査のための連絡調整と実施。電子会議室の管理。(松田)4)近代から現代に至る葬送儀礼(死後の処置、エンゼルメイク、湯灌、死装束、納棺の方法など)を中心とした文献研究と文献リストの作成(古川) 本研究では看取りに関し社会学と看護学の両方の分野の特性とネットワークを活かして調査と文献研究を実施することを目的としている。このため研究者全員が十分な情報を共有する必要があるため、定例研究会を欠かすことができない。当初の予算を超えて研究費の多くが交通費となったのは、研究分担者と研究協力者が研究会に参加するためである。またインタビュー・テープ起こしの謝礼がその他の出費の中心となっている。中村の台湾調査、および4名の長野調査の旅費は自己負担である。現段階での研究成果は以下の通りである。1)在宅での看取りの変化をとらえる上で、高齢化と増大する慢性疾患に対応して医療費の増大を抑制するために、在宅医療が着目されてきたこと。この在宅医療をめぐる法律の整備、直接には診療報酬体系の変遷に着目することはきわめて重要である。2)在宅での看取りに24時間体制でサポート体制をとる訪問看護ステーションの存在は看取る家族にとって、欠かせない重要な存在となっている。3)在宅死と病院死の明瞭な境界はなく、死にゆく患者や家族の強い意志が反映されるとは限らない。死に向かい、患者も家族も常に揺れ続け、とりわけ出血・呼吸困難・痛みが激しくでる場合、在宅から急きょ、入院に変わることもある。訪問看護ステーションは患者とその家族の<揺れ>につきあう形をとる。4)死の商品化の進行と言っても地域差を考慮に入れなければならない。兵庫県と長野県でも死後の処置の担い手に違いが見られる。この点は訪問看護ステーション、葬儀社、家族、地域等の要因を組み合わせて検討する必要がある。
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