研究課題/領域番号 |
16530370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
社会福祉学
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松田 博幸 大阪府立大学, 人間社会学部, 助教授 (30288500)
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研究分担者 |
児島 亜紀子 大阪府立大学, 人間社会学部, 助教授 (40298401)
田垣 正晋 大阪府立大学, 人間社会学部, 講師 (30347512)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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キーワード | アルコール依存症 / ピアサポート / セルフヘルプ・グループ |
研究概要 |
本研究においては、まず、社会福祉における質的研究の意義を検討した。質的研究とは、質的データの分析を通して、現象の記述、仮説あるいはモデル生成を目的とする研究のことである。質的研究の認識論では、真実は唯一無二に存在するのではなく、社会的、文化的、歴史的な文脈に依存し、一定変わりうると考える。また研究者はデータと積極的に関わっていくのであって、データが外在しているとはとらえられない。質的研究の意義は、実践者から物の見方を生産できることである。 以上のような方法論的枠組みにそって、アルコール依存症者のピアサポートの場であるAA(アルコホーリクス・アノニマス)の参加者に対してインタビューと質的分析を行うことを通して、AAのメンバーがどのようにAAのプログラムを用いながら回復を実現しているのかを明らかにすることを試みた。とりわけ、AAの参加者のQOLのスピリチュアルな側面に焦点をあてて分析を行った。 調査結果を通して、AAの参加者の回復の過程において、AAのプログラムだけでなく、グループ内でのパワーゲームが肯定的な役割を果たしていることが見えてきた。「完壁であることの不可能性」や「ハイヤパワー」の概念が回復の鍵となっていることが見えてきた。 AAでは、メンバー一人ひとりが「ハイヤーパワー」と呼ばれる存在を通して、自己の有限性、人間の能力の限界や不可能性を受け入れ、断酒を可能にする。ハイヤーパワーとは、それ自体決して現前することはないにもかかわらず、メンバーの生き方を決定的な仕方で基礎づけるものである。現れないものであるハイヤーパワーは、常にメタファでしか表現できない。 また、AAにおいて展開されているピアサポートは参加者のQOLを高めるだけでなく、援助専門職者の援助を変形させうることが、ソーシャルワーカーからのインタビュー調査の質的分析を通して明らかになった。
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